2011.07.04

ジョルジョとたくじを見送りに行く。
朝のカプリはなんだか朝の下北沢のようだ…夜の街特有の荒れた感じ。
いつものテラスからもう見慣れてきた崖を見下ろして、忙しかったなあとしんみりする。毎日チビがヒロチンコさんのマッサージ実技特別講義を受けていて、うらやましい。しかも「ママで充電しないとパパをマッサージしてあげられない」と言って、毎朝チビが目が覚めたとたんに遠くのベッドから犬みたいに寄ってきて抱きついてくるのが、カワイイッシモ。
午後は家族3人でソラーロ山のリフトに乗りに行く。人生の中でいちばんこわいリフト。むきだしで山頂までえんえん乗る。途中で「このサンダルをおとしたらどうしよう、それよりもサンダルを落としてびっくりして手を離して自分が落ちたら絶対死ぬ」という想像が止まらない。山頂の高さも生涯知ってる中でもピーク的高さで、かもめがありんこに、船が豆粒に見える。
帰りのリフトも超こわくて、今度は「カバンからカメラを出してカメラを落としてはっとして自分が落ちる」のを想像してドキドキが止まらない。
せっかくだから青の洞窟を目指し、その上のおいしいレストランでチビがいきなり鼻血を出したら、高級店なのにとても親切にデッキチェアに寝かせてくれた。様子を見に行くとチビが泣いているから「どうした?つらいの?」と聞いたら、「ママが好きすぎて。ママがあの階段をドスドス降りて会いにきてくれて嬉しすぎて」となんだか一部分だけ気にさわることを言っていた。
ホテルに戻り最後の晩餐。ホテルのレストランの人たちとすっかり顔なじみになり、ピアニストとも仲良くなったので、とても切ない。さよならカプリ。
2011.07.03

超忙しい午前中。インタビュー、撮影、学生とのワークショップ、またまた撮影。
学生とのワークショップには、どう考えても学生じゃないでしょう!という人もたくさん混じっていたので、さらにすごく目の前にヒロチンコさんが座っていて、かえってドギマギした。
あまりのたいへんさに最後はそっと逃げ出してランチを食べに行った。広場の奥にある有名な観光用の店なんだけれど、お手頃値段でおいしい。しかし疲れすぎていて腹が減らない!パッケリがあまりにもうまいのに、食べきれずみんなにわけた。としちゃんと涙の別れ、淋しくてぽかんとなった。
夜は女主人ドロテアさんの招待を受け、リゴーリ家別荘でのガーデンパーティ。映画に出てくるようなすごい邸宅&庭。
専属の料理人がどんどん豪華な料理を作り、ブッフェ形式なのでみな思い思いに皿を持って並び、召使いたちがサーブし、楽隊は音楽を奏でていた。
社交界が長そうな貿易関係の年配のご夫妻が軽い正装で次々現れ、華やかな雰囲気。
海が見える寝室にすばらしいドレスや靴や帽子やバッグが並べられ整然としたウォークインクローゼット…などを見ながら、私たちグループは常に「ワインとってほしいな〜」「しまった盛りつけすぎた」とかしか言ってなかったような。
チビをのぞけば20代後半のガラちゃんと彼氏が最年少。かわいらしさのあまりギラギラしたおじさんにせまられたりしていて、それをたくじが実況中継していて妙におかしかった。「今、おさわりがありました!」「近い近い!」などなど。社交界には一生入れそうにない。
途中でドロテアさんのかなりこなれた感じの息子さんがやってきて、そのキラキラした目を見たときに、このご家族のこれまでの人生のすべてが映ってるような気がして、切なくなった。こちらがびっくりしていることも、もちろん彼には伝わっていた。「たいへんでしたね」「たいへんだったんだ」と言葉に出さず会話をした。
大実業家の娘そして孫、普通の人生を生きることは許されなかった人たち。その運命をまっこうから受け止めて生き抜いてきた強い人たち。
2011.07.02

しだいに仕事モードに入ってきて、とりあえず記者会見。イタリア記者たちに混じって共同通信と読売と時事通信の方々がいらしたので、日本語をてきとうにできず冷や汗をかく。でもなんだか心強かった。ガラちゃんもやってきて、てきぱき訳してくれる。日本のしっかりしたかわいいおじょうさんに全てがそっくりで、あの人は日本人じゃないの?とチビも不思議そうだった。
ジョルジョとたくじ到着。みんなでランチを食べる。
せっかくだからとバスに乗ってとなり町のアナカプリに行き、アクセル・ムント邸だったヴィラ・サン・ミケーレを見に行く。三回目だが、何回見てもいい家だ。敷地は広いけど贅沢なものはなく、もともと遺跡だったために地中から発掘されてしまったものが壁に埋め込まれてさりげなく息づいている。こんな簡素で美しい暮らしがしたいと思う。いつのまにかカフェまでできていたので、のんびりお茶を飲んだ。イタリアを知り抜いたたくじがいるからこそ可能な移動の数々で、ほんとうにほっとする。
夜は授賞式。ホテルの屋上にすばらしい会場がセッティングされていた。カプリをぐるりと眺められて、夕方の光がとてもきれい。
私は女優のシルヴィアさんといっしょに「ばらの花」を朗読。
シルヴィアさんのおじいさんにとても美しいばらの花のエピソードがあり、それを教えてくれたりしていろいろおしゃべりしたので、意気投合していていい感じだった。
ディナーの間は、スポンサーのおひとり、80代なのにしゃきっとしているドロテアさんの数奇な人生の話を聞く。パパはイタリア人の大実業家で、彼女はたったひとりの跡継ぎ。日本人のママとはほとんどいっしょにいられなかった。一見こわそうな人だが、これまでになんでもかんでも見てきた人特有の懐深さがあって話しやすい。
日本も実はそうなんだけど、イタリアではもっとわかりやすく服と靴とジュエリーを見るだけで、その人がどの階層に属していてどういう人生観を持っているかはっきりとわかるシステムになっている。
ほんもののお金持ちはジュエリーのクラスが違うし、服の丈や素材も決まっているし、帽子も違う。TPOに関して徹底的なまでにしきたりがあり、どのブランドかわかるブランドものは基本的に持っていない。ちょっと背伸びしたくらいでは決して入れない世界だ。
わかりやすく言うとたとえば叶姉妹は「家のクラスはそんなに高くないが、実業を営んでいて、人脈はかなり広い。女を売っているが堂々としているのは、客のクラスが圧倒的に高いからである、だから軽んじてはいけない」という人の絶対的なドレスコードで動いていて、あの服装と行動パターンは彼女たちのリアルな生活に基づいたもの。全然大げさじゃない。
同じアーティストでも、何%くらいアート寄りか、どういう人付き合いか、お金があるアーティストなのかどうかも見ればわかる。私の場合は一目で「ヒッピーよりの小金持ち、場慣れはしてる、アートに関してはプロ」とわかってしまう。見た目でそこまで主張して初めて言葉を交わすことができるシステム。
そしてほんものの上流階級の人たちが集まるところには、ほんとうにハイエナみたいにただそこにいておこぼれをもらっている人がふらふらと集まってくる。
そんなヨーロッパ人から見たら、きっと一般の日本人ってわけがわからないんだろうな。
2011.07.01

まだだれも来ないし、やることもないからとりあえず船でも乗ろうと思って、一周を試みる。また突撃英会話で値切ったり(値切ってもボラれてるんだけど)しながら、なんとか船に乗る。寝転がって優雅に二時間の遊覧。青の洞窟はお休みなので他のいろんな洞窟を見たり、島のまわりのすごい崖を眺めたりした。外海はすごい波で、しまいには船酔いしてきた。青の洞窟が休みの日はつまり海が荒れているので小舟では出ない方がよかったってことを思い出したけど、遅かった。
なんとか吐かずによれよれでとしちゃんを港に迎えに行ったら、ナポリからの船も当然揺れてて、船酔いでよれよれのとしちゃんがやってきた。
港に人を迎えに行くのって、なんとも言えず好きな感じ。
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