2009.04.13

葉山に行くと、たまたま入ったお店の人が「よしもとさんですか?」と声をかけてくれた。聞いてみれば下北から毎日通っている人で「わざわざここではじめて会わない方がよかったんじゃ」とお互いに言いあう。
海でチビが思いきり走り回っているのを見るとほっとする。犬もたくさん。売るほど歩いている。
そういえば、このあいだ近所のおしゃれさんアキバさんにばったり会い、連れている犬に「お名前は?」と聞いたら、アキバさんが「アンドウさんです」と答えた。そういえばメールに書いてあって衝撃を受けたその名前。「アンドウさんなの?」と言ったら、アンドウさんは無心にしっぽを振っていた。別姓のふたりが暮らしているんだな…その家では。
2009.04.12

チビがドラえもんを観るというので、いっしょに映画館に行く。退屈だなあと思っていたはずなのに、けっこうしっかり観て涙する私…。それにしてもあんな小さなメカで惑星のコアを破壊するのは、ちょっとむつかしいんじゃないかな〜と思う。葉桜を見に目黒川に行って遊んでいたら、なんと長谷川夫妻が偶然通りかかりばったり会えちゃって、すごくラッキー!
ラッキーは続き、そのあとヒロチンコさんと合流してさくっと入った飲み屋には土屋アンナさんが!よほど「好きです、大ファンです、応援してます、よしもとばななです」と言いに行こうと思ったけれど、特に最後のところが恥ずかしかったし、プライベートでいらしているし、チビが最高にうるさくて迷惑かけまくったし、チビがオロナミンCを三本も飲んでトイレに行きまくり大騒ぎをしたし、チビが「おっぱいを飲むぞ〜」と言って私のセーターの両乳首の部分にトマトソースをべったりつけて変なシミがついた変な女になっていたので、ぐっとこらえて自粛した。アンナさんは生だといっそう美しくすばらしい声だったので、ますますファンになった。これを読んでいるアンナさんの知人友人は、私があのとき断腸の思いで店を出たことをぜひ伝えてほしいです。
2009.04.11

大島さんとたけしくんとたかちゃんが来るっていうんで、今週も谷中墓地へ。しかし花はない!葉を眺めながら寒くなって来たから帰ろうか、でも盛り上がらないねということになり、甘いものの帝王陽子さんのパパ御用達のショウゾウイナムラへダッシュ!ラスト五分に大勢でかけこんだのに、優しいお店の人たち。そして、予約の人にバースディケーキを手渡ししているショウゾウさんは下町のおじさんみたいですてきだった。変な愛想を見せないけれど、ひいきにしてくれる人には礼をつくします、という職人さんらしい感じだったので、あの店の味がますます好きになった。
2009.04.10

箱根へ。なんとも言えない宿に泊まり、なんとも言えないごはんを食べ、あまりにもなんとも言えなかったので、予定を変えて芦ノ湖へ向かう。海賊船に乗りまくり、風と光に当たりまくり、ピザを食べまくり、神社にお参りしまくり、やっとバランスがとれた。
船のデッキにいるときにしか味わえないあの広がっていく気持ち、たとえ芦ノ湖でもしっかり感じられる。富士山もばっちりと見えていた。
ところで、この世の70パーセントくらいがその「なんともいえない」でできている。「憎めないけど親友にはなれないね」とか「イケメンだけど口元が不潔だね」とか「感じいいけど察しが悪いね」とか「いい人だけどお金にはだらしないね」とかそんな感じだ。なんともいえないは基本的に治らないのも大事なポイント。
そしてそれが店や宿や品物の場合、価格とは関係ないというのもポイント。帰りに行った老辺餃子館の二号店は一号店よりも気合いが入りなおしていて安いのになんともいえないレベルではなかった。バランスこそが全てだ。
2009.04.08

糸井さんと「LIFE」のための対談のため、飯島奈美さんのスタジオへ。
糸井さんと対談するのは実ははじめてで緊張したけど、先方のキャリアのすごさですぐに軌道にのった。さすがだ…糸井さん、食べながら話せるし!そしてなにをしていても次々にアイディアが出てくるのもすごいけれど、その場でつめすぎないのもすごい。糸が切れた凧みたいにアイディアをふわふわといくつも飛ばしっぱなしにしておいて、つながるのを待つ、すばらしい方法だ。また、普通ここからは引き返せないだろう、というところで引き返せるのもすごいと思った。もやもやしたまま進むとろくなことがないから、自分が憎まれてもやりなおす、みたいな英断の数々でほぼ日はできているんだね!ものすごくためになった。あの、自分の責任で進めたけどやっぱりやめようと思うときの、苦い気持ちとか重い気持ち。あれを避けるためならなんでもします、と普通は思う気持ちを、現場で経験しつくしてるから、糸井さんは成功するんだな…。
飯島さんのごはんも理性と論理と最後まで気を抜かない細かい詰めの連続で、ただおいしくつくろうとなんとなくやっているのでは絶対ないことに、しみじみ感動した。
「LIFE」はその通りに作ると、魔法の味がきちんと出現するマジで魔法のような料理本なのだ。急に食卓に夢が降ってくる。
飯島さんになにかを問いかけると「え〜っと」とか「う〜ん」とか「こうなんじゃないかな〜」みたいなことは一個も言わない。常にはっきりとした答えが返ってくる。それは性格ではなくって、全部のことにちゃんと結論を持っていて、しかもその結論がフレキシブルな人特有のものだ。彼女の味もまさにそういう味。
次々においしいものが出てきて、「家庭の味を料亭の技で食べている」といういちばん幸せなことが叶った午後でした。
しかしなんだか体が一回り大きくなった気がしたので、いっちゃんとおしゃべりしたりスパークリングワインを立ち飲みしたり買い物したりしながら、一時間くらいかけてゆっくり歩いて帰った。ほんとうにおいしいものをいっぱい食べると、お酒もほとんどいらないし、屋台のフランクフルトやクレープにも、お腹がいっぱいだからではなく、目がいかないってことがよくわかった。
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